こんにちは。モノコスメラボ サイガです。
だいぶお久しぶりになってしまいました。
地震や台風、大雨など、いつ起こるかわからない災害。
ついこの前、現在住んでいる名古屋市も大雨で道路が冠水して帰宅困難者もたくさんいらっしゃいました。
水や食料、ライト、モバイルバッテリーなど、命や暮らしを守るための備えはもちろん大切です。
それと一緒に、「いつもの自分を取り戻すためのもの」も、防災バッグに少しだけ備えてみませんか。
慣れない場所で過ごしたり、先の見えない状況が続いたりする災害時は、心も身体も緊張しがちです。
そんなとき、いつも親しんでいる香りを感じて、ゆっくり深呼吸する。
香りはとても小さなものですが、気持ちを切り替えたり、ひと息ついたりするきっかけのひとつになります。
今回は、防災時の香りとして備えておきたい精油の中から、
真正ラベンダー・ティートリー・オレンジスイート
の3つをご紹介します。
精油の抗菌・抗真菌作用について研究されていることや、災害時に安全に香りを取り入れる方法についても、一緒に見ていきましょう。
災害時にアロマや精油があると、どんなときに役立つ?
精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花や葉、果皮、木部などから抽出された芳香成分を含むものです。
植物によって香りも含まれる成分も異なり、それぞれに特徴があります。
精油(エッセンシャルオイル)とは?
災害時には、たとえば、
・緊張が続き、ひと息つきたいとき
・慣れない場所で就寝するとき
・気分をすっきり切り替えたいとき
・避難生活で気持ちが沈みがちなとき
・周囲のにおいが気になるとき
などに、「香りを感じる」というシンプルな方法で取り入れることができます。
電気や特別な道具を使わず、ティッシュやコットンがあれば香りを楽しめることも、災害時に精油を備えておくメリットのひとつです。
では、防災バッグに入れておきたい3つの精油を見てみましょう。
災害時に備えたいおすすめの精油3選

1.真正ラベンダー|緊張が続くとき、ひと息つく香り
真正ラベンダーは、やさしいフローラル調の中にハーバルな爽やかさを感じる香りです。
アロマテラピーを代表する精油のひとつで、リラックスタイムの香りとして広く親しまれています。
災害時は、いつもと違う環境や先の見えない状況から、知らず知らずのうちに緊張が続いてしまうことがあります。
そんなときは、ティッシュやコットンに真正ラベンダー精油を少量垂らし、自分の近くでそっと香らせてみるのもひとつの方法。
香りを感じながら、ゆっくり息を吸って、吐く。
ほんの短い時間でも、意識して呼吸するきっかけをつくることができます。
就寝前など、気持ちを休息へと切り替えたい時間にも取り入れやすい香りです。
香りと深呼吸についてはこちら
2.ティートリー|すっきりとした清潔感のある香り
ティートリーは、オーストラリア原産の植物から採れる精油です。
シャープで爽やかな、清潔感を感じさせるグリーンな香りが特徴。
避難生活などで周囲のにおいが気になるときや、気分をすっきり切り替えたいときにも取り入れやすい香りです。
そしてティートリーは、香りだけでなく、抗菌・抗真菌作用について多くの研究が行われている精油のひとつでもあります。
「精油に抗菌作用があるって、どういうこと?」
そんな疑問については、後ほど少し化学的な視点からご紹介します。
3.オレンジスイート|気持ちを明るく切り替えたいときに
オレンジの果皮から採れるオレンジスイート精油。
フレッシュでみずみずしく甘い、果実そのものを思わせる親しみやすい香りです。
災害時には不安や緊張だけでなく、避難生活が続くことで気持ちが沈んでしまうこともあります。
そんなとき、明るく甘いオレンジの香りを感じて、気分を切り替える時間をつくってみるのもよいでしょう。
オレンジスイートの香りと不安などの心理状態との関係については、人を対象とした研究も行われています。
もちろん、香りの感じ方や好みには個人差があります。
「この香りを嗅げば元気になる」と考えるのではなく、
少し気分を変えたいときに、自分の好きな香りを感じる。
そんな小さなセルフケアとして取り入れてみてはいかがでしょうか。
精油には抗菌・抗真菌作用がある?研究から分かっていること

精油について調べていると、「抗菌作用」や「抗真菌作用」という言葉を目にすることがあります。
精油はひとつの物質ではなく、植物がつくり出すさまざまな芳香成分の集まりです。
その成分や精油の種類によっては、細菌や真菌に対する作用について研究されているものがあります。
今回ご紹介した精油の中でも、特にティートリーは抗菌・抗真菌作用について多くの研究が行われています。
ティートリー精油と抗菌・抗真菌作用
ティートリー精油には、「テルピネン-4-オール(C₁₀H₁₈O)」をはじめとするさまざまな芳香成分が含まれています。
ティートリー精油やその成分については、細菌や真菌を対象とした研究が行われ、一定の実験条件下で抗菌・抗真菌作用が報告されています。
ここで少し知っておきたいのが、「抗菌」と「抗真菌」の違いです。
抗菌とは、細菌の増殖を抑えるなど、細菌に対して作用すること。
一方、抗真菌とは、カビや酵母などの真菌に対して作用することをいいます。
植物の「香り」をつくっている成分が、このような性質についても研究されていると知ると、精油を少し違った角度から見ることができます。
ただし、ティートリー精油は多数の成分からできているため、「テルピネン-4-オールが入っていれば、どのティートリー精油でも同じ」という単純なものでもありません。
精油の成分組成や濃度、対象となる微生物、実験方法などによって結果が変わることも知っておきたいポイントです。
真正ラベンダー精油にも抗菌作用がある?
真正ラベンダー精油についても、抗菌作用や抗真菌作用を検討した研究があります。
真正ラベンダーには、リナロール(C₁₀H₁₈O)や酢酸リナリル(C12H20O2)など、さまざまな芳香成分が含まれています。
一方で、ラベンダー精油の抗菌作用については、対象となる微生物や研究条件によって結果に違いがみられています。
そのため、
「ラベンダー精油には抗菌作用があるから、○○に使える」
と単純に結びつけるのではなく、
「ラベンダー精油についても、抗菌作用などを検討する研究が行われている」
と捉えるのが適切でしょう。
植物の香りを「いい香り」という感覚だけでなく、その香りを構成している成分から見てみる。
これも、精油の面白さのひとつです。
「抗菌作用がある」と「消毒に使える」は同じではありません
ここは、とても大切なポイントです。
研究によって精油や芳香成分の抗菌・抗真菌作用が示されていることと、私たちが持っている精油を消毒剤や医薬品の代わりとして使用できることは同じではありません。
研究では、精油の濃度、対象となる微生物、温度、接触時間など、一定の条件を設定して作用を調べています。
精油そのものにも成分組成の違いがあります。
そのため、災害時の衛生管理では、手洗いや公的に推奨されている方法による消毒を基本にしてください。
傷口などに精油の原液を直接つけて処置することもおすすめできません。
精油は「消毒するために防災バッグへ入れる」のではなく、まずは香りを楽しむためのものとして。
そのうえで、
植物の芳香成分には、こんな一面も研究されているんだ」
と知ると、いつもの精油が少し違って見えてくるかもしれません。
災害時におすすめの精油の使い方|ティッシュで簡単芳香浴
災害時に精油を取り入れるなら、特別な道具を必要としない芳香浴が手軽です。
ティッシュやコットンに精油を少量垂らし、自分の近くに置いて香りを楽しみます。
ディフューザーのように電気を使う必要もありません。
香りが強すぎると感じたら距離を離し、「ほのかに感じる程度」で楽しみましょう。
また、ハンカチなどに精油をつける場合は、精油が直接肌に触れないよう注意してください。精油によってはシミになることもあるため、大切な布製品への使用も避けたほうが安心です。
避難所でアロマを使うときに大切なこと

災害時にアロマを取り入れるうえで、特に気をつけたいのが周囲への配慮です。
自分にとって心地よい香りでも、ほかの人にとって心地よいとは限りません。
香りを苦手に感じる人もいれば、体調によって普段は好きな香りを不快に感じることもあります。
多くの人が一緒に生活する避難所では、ディフューザーなどを使って空間全体に香りを広げるのではなく、
「自分のために、自分の近くで香らせる」ことを基本にするとよいでしょう。
ティッシュやコットンなどに少量垂らして、自分の鼻の近くでそっと香りを感じる。
災害時だからこそ、自分だけでなく、同じ空間で過ごす人への思いやりも忘れずに香りを楽しみたいですね。
アロマを手軽に楽しむ方法はこちら
防災バッグに精油を入れるときの注意点
精油は植物由来ですが、植物の芳香成分が高濃度に含まれています。
「天然のものだから、どのような使い方をしても安全」というわけではありません。
災害時にも、
・精油の原液を直接肌につけない
・精油を飲まない
・目や粘膜に触れないようにする
・子どもが誤って触れたり飲んだりしない場所に保管する
・火気の近くで使用しない
・香りで気分が悪くなった場合は使用をやめる
といった基本的な注意を守りましょう。
真正ラベンダーやティートリーは原液での使用方法が紹介されることもありますが、安全性を考慮し、本記事では精油の原液を皮膚に直接使用することはおすすめしていません。
また、妊娠中の方、乳幼児、高齢者、持病がある方などは、精油の種類や使い方についてより慎重な判断が必要です。
精油は医薬品ではありません。
災害時にケガや体調不良がある場合は、精油による自己判断での処置を優先せず、可能な範囲で適切な医療や公的な衛生対策につなげることが大切です。
よくある質問|災害時の精油・アロマについて
Q. 防災バッグに精油を入れておいてもいい?
香りを楽しむ目的で精油を備えておくことはできます。
ただし、精油は光や熱、空気などの影響を受けて少しずつ変化していきます。
防災バッグに入れたままにせず、ほかの防災用品と一緒に定期的に状態や使用期限などを確認するとよいでしょう。
Q. 避難所でアロマを使ってもいい?
周囲の人への配慮がとても大切です。
不特定多数の人が過ごす場所では空間全体に香りを広げず、ティッシュやコットンなどを使って自分の近くでほのかに楽しむことをおすすめします。
Q. ティートリー精油は消毒の代わりになる?
ティートリー精油については、抗菌・抗真菌作用を検討した研究が数多くあります。
ただし、それは市販のティートリー精油を災害時の消毒剤の代わりとして使用できるという意味ではありません。
災害時の衛生管理では、手洗いや公的に推奨されている消毒方法を優先してください。
Q. 精油を傷口や肌に直接つけてもいい?
精油の原液を傷口や肌に直接つけることはおすすめできません。
精油は芳香成分が高濃度に含まれているため、原液で使用すると皮膚刺激などにつながる可能性があります。
Q. 災害時に1本だけ精油を選ぶなら?
「どの精油が一番よい」という正解はありません。
休息の時間に取り入れたいなら真正ラベンダー、すっきりした香りが好きならティートリー、明るく親しみやすい香りが好きならオレンジスイートなど、普段から自分が心地よいと感じている香りを選ぶのがおすすめです。
災害が起きてから初めて使うのではなく、日頃からその香りに親しんでおくことも大切です。
「いつもの香り」も、小さな防災のひとつに
防災用品というと、まず思い浮かぶのは「生きるために必要なもの」。
水、食料、薬、ライト。
もちろん、それらを備えることが何よりも大切です。
でも、その小さな防災バッグの片隅に、自分の心をいたわるものがひとつあってもいいのではないでしょうか。
真正ラベンダーの香りで、ひと息つく。
ティートリーの清々しい香りで、気分を切り替える。
オレンジスイートの明るい香りを感じる。
そして、ゆっくり深呼吸する。
いつもの香りは、いつもと違う状況の中で、自分に戻るための小さなきっかけになるかもしれません。
もしものために備えるもののひとつとして。
「香りの備え」も、防災バッグに加えてみませんか。

香りを感じて、深呼吸する時間を日常にも。
KAGU&EASEでは、多摩ヒノキ精油を軸に、森の時間の移ろいをイメージした3つの香りをつくっています。
→ 「森の時間をイメージした3つの香りを見る」
参考文献・参考サイト
本記事では、精油について正しくお伝えするため、以下の文献・情報を参考にしています。
・Carson CF, Hammer KA, Riley TV. Melaleuca alternifolia (Tea Tree) Oil: a Review of Antimicrobial and Other Medicinal Properties. Clinical Microbiology Reviews. 2006;19(1):50-62.
ティートリー精油およびその成分の抗菌・抗真菌作用などについてまとめたレビュー論文。
ティートリー精油のレビュー論文(PubMed Central)
・Prerna, Chadha J, Khullar L, et al. A comprehensive review on the pharmacological prospects of Terpinen-4-ol: From nature to medicine and beyond. Fitoterapia. 2024;176:106051.
ティートリー精油の主要成分のひとつであるテルピネン-4-オールについて、その抗菌・抗真菌作用などの研究をまとめたレビュー論文。
テルピネン-4-オールのレビュー論文(PubMed)
・Truong S, Mudgil P. The antibacterial effectiveness of lavender essential oil against methicillin-resistant Staphylococcus aureus: a systematic review. Frontiers in Pharmacology. 2023;14:1306003.
ラベンダー精油の抗菌作用に関する研究をまとめたシステマティックレビュー。研究によって結果にばらつきがあることも報告されています。
ラベンダー精油のシステマティックレビュー(PubMed)
・Goes TC, Antunes FD, Alves PB, Teixeira-Silva F. Effect of sweet orange aroma on experimental anxiety in humans. Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2012;18(8):798-804.
健康な成人を対象に、オレンジスイートの香りと実験的に誘発した不安との関係を調べた研究。
オレンジスイートのヒト研究(PubMed)
・公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)「精油を安全に楽しむために」
精油の原液を皮膚につけない、飲用しない、目に入れない、火気に注意するなど、精油を安全に使用するための基本的な注意事項を参考にしています。
※本記事は精油やアロマテラピーについての一般的な情報提供を目的としたものであり、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。精油は医薬品や消毒剤の代わりとなるものではありません。










